フランス語を打つには、ふだんお使いの日本語キーボードとはかなり大きく異なる配列を使います。 この手引きでは、AZERTY(アゼルティ)配列の仕組みと、指の置き方、覚える順序を説明します。 フランス語らしい é è à ç ù の打ち方も、順を追って見ていきます。
フランス語は、英語と同じラテン文字26字で書きます。 ただし、そのうちのいくつかの文字にはアクセント記号が付きます。 記号の付いた文字は、もとの文字とは別の音を表したり、別の語であることを示したりします。
中世のフランス語には、アクセント記号がありませんでした。 16世紀、印刷術が広まるなかで、同じつづりの語を区別したり、 発音を正しく伝えたりするために、記号が使われはじめます。
印刷業者たちが工夫を重ね、やがてアカデミー・フランセーズ(1635年設立)が つづりの決まりを整えていきました。今のアクセント記号の使い方は、この流れのなかで固まったものです。
â ê î ô û の上にある山形の記号をアクサン・シルコンフレクスといいます。 この記号の多くは、かつてそこにあった s が消えた跡です。
| 今のフランス語 | 古い形 | 英語 |
|---|---|---|
| hôpital | hospital | hospital |
| forêt | forest | forest |
| île | isle | isle / island |
| fête | feste | feast |
ç の下に付いたしっぽをセディーユといいます。 名前はスペイン語の zedilla(小さな z)に由来し、もともとは c の下に小さな z を書いたものでした。
役割ははっきりしています。c は a o u の前では「カ・コ・ク」と読みますが、 セディーユを付けると「サ」の音になります。 garçon(少年)が「ガルソン」であって「ガルコン」でないのは、このためです。
ë ï ü の上の2つの点をトレマといいます。ドイツ語のウムラウトと形は同じですが、 働きはまったく違います。トレマは、前の母音とつなげずに、別々に読むという印です。
Noël(ノエル) naïf(ナイフ) maïs(マイス)
トレマがなければ oe や ai はひとつの音になってしまいます。 mais(しかし、「メ」)と maïs(とうもろこし、「マイス」)は、点の有無で別の語です。
1990年、フランス語の正書法に手直しが加えられました。 このとき、i と u の上のシルコンフレクスは、多くの語で付けても付けなくてもよいことになりました。
ただし、付けないと意味が変わってしまう語では今も必要です。 sur(〜の上に)と sûr(確かな)、du(〜の)と dû(負っている)は区別します。 古い本と新しい本でつづりが違うことがあるのは、この改訂のためです。
フランス語で使うアクセント記号は5種類です。まず、どんな記号があるのかを見ておきましょう。
à と ù のアクサン・グラーヴは、 音を変えるためではなく、同じつづりの別の語を区別するために付いていることがあります。
| 記号なし | 意味 | 記号あり | 意味 |
|---|---|---|---|
| a | (動詞)持っている | à | 〜へ、〜に |
| ou | または | où | どこ、〜するところ |
| la | (冠詞)その | là | そこ |
ù がフランス語で使われるのは、事実上 où という語だけです。 それなのに専用のキーが用意されているのは、この語がとてもよく使われるからです。
下の枠をクリックしてから、入力方法を半角英数字に変更のうえ、日本語キーボードのキーをそのまま打ってください。 フランス語配列を入れていなくても、この枠の中だけは AZERTY 配列として読み取ります。 Q を打てば a、 2 を打てば é が出ます。
押すキーの例(クリックすると打つキーの並びが分かります)
Shift と 右 Alt(AltGr)も、そのまま試せます。 右Alt + 0 で @ が出ます。 この枠の中では、左の Alt でも同じように試せます。
フランス語を打つには、パソコンにフランス語キーボードを追加します。一度追加すれば、 キーを1つ押すだけで切り替えられるようになります。
日本語キーボードにフランス語の刻印はありません。次のいずれかで対応できます。
フランス語の標準配列をAZERTYと呼びます。日本語キーボードのアルファベットの並びを QWERTY と呼ぶのと同じで、最上段の左から6文字を並べた呼び名です。
キーの上の小さな文字は日本語キーボードの刻印、まん中の大きな文字がフランス語、
下がそのキーを打つ指です。
枠が黄色く、下の辺が太いキーがホームポジションです。
水色のキー(印は 仏)がフランス語だけの5文字、
橙色で枠が破線のキー(印は 待)がデッドキーで、
押しただけでは何も出ません。くわしくは項目8で説明します。
左で始まるものは左手、右で始まるものは右手です。 左手のキーは左の枠が太く、右手のキーは右の枠が太くなっています。 うすく見えているキーは、フランス語配列では何も割り当てられていません。
色が出ない環境について。 パソコンやブラウザの設定によっては、上の図の色分けが反映されないことがあります。 ハイコントラスト表示(Windowsの「コントラストテーマ」、Macの「コントラストを上げる」)、 画面の色フィルタやグレースケール表示、配色を上書きするブラウザの設定や拡張機能、 それに白黒での印刷がこれにあたります。 そのときは下の辺が太いキーを目印にしてください。 左から Q S D F(刻印は A S D F)で始まる段がホームポジションです。 フランス語だけの5文字には 仏、デッドキーには 待 の印が付いていますので、 色がなくてもこの印で見分けられます。
左手の小指から人差し指をそれぞれ q s d f に、 右手の人差し指から小指を j k l m に置きます。 日本語キーボードの A S D F と J K L ; の刻印と同じ位置です。
日本語キーボードと違うのは、両手の小指だけです。
q s d f j k l m
左は A の刻印が q に、右は ; の刻印が m になります。 ホームポジションの8つのうち、6つは日本語キーボードの刻印とまったく同じです。
それぞれの指は、ホームポジションから上下の段へ伸ばして、また戻るのが基本です。 下の表は、各指が受け持つキーの一覧です。
キーボードの上の段から順に並べています。 ホーム の印が付いた文字が、その指の定位置です。
いちどに全部を覚える必要はありません。次の順に広げていくと無理がありません。
q s d f j k l m
日本語キーボードでアルファベットが打てる方は、両手の小指を打ち替えるだけです。 左の小指が q、右の小指が m になります。
a z q w m
A ↔ Q、Z ↔ W の入れ替えと、M の移動です。 日本語キーボードとの違いはここに集中しているので、早く手になじませるほど楽になります。 amis(友だち)、quoi(何)と 打ちながら、指に覚えさせてください。
é è à ç ù
数字の段の 2 7 9 0 と、 右手小指の : のキーです。 é はフランス語でいちばんよく出るアクセント字ですので、 ここだけは先に覚えておくと効きます。
e r t y u i o p、g h、x c v b n は、日本語キーボードの刻印と同じ位置です。 覚え直す必要はありません。
Shift + 数字 , . ' ^ ¨
数字に Shift が要ること、句読点の位置、そしてデッドキーです。 文章を書きはじめると必ず必要になります。 くわしくは項目7と項目8で説明します。
AZERTY では、数字の段をそのまま押すと記号や文字が出ます。 数字がほしいときは Shift を押しながら打ちます。
キーの上が Shift を押したときに出る文字、まん中が Shift なしで出る文字、
下がそのキーを打つ指です。
数字の段は、Shift を押してはじめて数字になります。
大文字は Shift を押しながら打ちます。日本語キーボードでアルファベットを打つときと同じです。
反対の手の Shift を使います。
é è à ç ù は、キーを1つ押すだけで出ます。組み合わせは要りません。
| 文字 | 押すキー(日本語キーボードの刻印) | 打つ指 | 語の例 |
|---|---|---|---|
| é | 2 のキー | 左手の薬指 | été(夏) |
| è | 7 のキー | 右手の人差し指 | père(父) |
| ç | 9 のキー | 右手の薬指 | garçon(少年) |
| à | 0 のキー | 右手の小指 | voilà(ほら) |
| ù | : のキー | 右手の小指 | où(どこ) |
デッドキーは、次に打つ母音と組み合わせて1文字を作るためのキーです。 日本語キーボードの @ のキーがこれにあたり、 そのまま押すとシルコンフレクス、Shift しながら押すとトレマになります。
| 打つ順番 | 出る文字 | 語の例 |
|---|---|---|
| ^ → e | ê | être(〜である) |
| ^ → o | ô | hôpital(病院) |
| ^ → i | î | île(島) |
| ¨ → e | ë | Noël(クリスマス) |
| ¨ → i | ï | naïf(素朴な) |
| ^ → Space | ^ | 記号そのものを出したいとき |
キーボードの右側にある Alt キーを、フランス語配列では AltGr(アルトグラフ)と呼びます。これを押しながら打つと、3つめの文字が出ます。 @ や # といった、よく使う記号がここに置かれています。
キーの上が AltGr を押したときに出る文字、まん中が そのまま打ったときの文字、
下がそのキーを打つ指です。
黄色い枠のキーだけが AltGr で別の文字になります。
フランス語入力でまちがえやすい例を挙げておきます。
| まちがえやすい組 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 数字が出ない | そのまま押すと記号や文字が出る | 数字は Shift。連続して打つときは Caps Lock |
| a / q | 日本語キーボードの刻印と入れ替わっている | 左手の小指が q、その左上が a |
| z / w | 日本語キーボードの刻印と入れ替わっている | z は上の段、w は下の段 |
| m / ; | 日本語キーボードの ; のキーが文字になる | 右手の小指の定位置が m だと体で覚える |
| . / , | ピリオドとコンマが両方とも移動している | , は M のキー、. は Shift + , のキー |
| @ / AltGr + 0 | 日本語キーボードでは @ キーを押すだけだが、そのキーがデッドキーになっている | AltGr + 0。à のキーと覚える |
| ^ ¨ が出ない | デッドキーなので単独では何も出ない | 記号だけ出したいときは続けてスペース |
| É が出せない | Shift + é は 2 になる | Caps Lock を入れてから打つ |
| ' が打てない | アポストロフィの位置が変わっている | 4 のキーをそのまま押す |
5分で構いません。長く続けるより、短い時間でやめておくほうが、また明日も開こうという気になります。 疲れたら無理をしないで途中でやめてください。毎日少しずつ進めることに意義があります。
打てない日があっても、それまでの練習が消えるわけではありません。 忙しくて間があいてしまっても、また始めればいいだけです。タイピング練習は「ゆるく・長く」が上達のコツです。
はじめは配列図を見ても構いませんが、手元は見ないでください。 画面と図だけを見て打つようにすると、指が位置を覚えます。
日本語キーボードでアルファベットが打てる方は、動く5文字とアクセント付きの文字が入った語を 選んで打つのがいちばん効率的です。違いのある部分だけを集中して練習できます。
打ちはじめによい語
| 語 | 意味 | 覚えどころ |
|---|---|---|
| été | 夏 | é |
| père | 父 | è |
| voilà | ほら | à |
| garçon | 少年 | ç |
| où | どこ | ù |
| être | 〜である | ê(^ と e) |
| Noël | クリスマス | ë(¨ と e) |
| amis | 友だち | a m |
| quoi | 何 | q |
| aujourd'hui | 今日 | ' と j |
意味のある文章を打つと、語の区切りやつづりが自然に身につきます。 同じ文章を何度も打つことで、頻出する語や語尾など類似の文字列の指の動きがスムーズになります。 フランス語は冠詞や前置詞が短くて繰り返し出てくるので、 同じ並びを打つうちに指が覚えてくれます。